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手抜き!おいなりちらしごはん

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  左は父の正統なおいなりさん、右は今回の手抜きごはん 実家に帰ると、父がときどきおいなりさんを作ってくれる。 おいなりさん、小さい時に食べていたのは中が白いご飯だったと思う。中のご飯に色々入っているおいなりさんは、けっこう大人になってから知ったんじゃないかな。 バリバリの江戸っ子の上司が「どうしてこの辺りの稲荷寿司は白いご飯じゃないの」と不満そうにこぼしていた記憶があるから、東京では白いご飯が基本なのかもしれない。けど、中がちらし寿司のおいなりさんの方がなんだかオシャレだよね、と私は思っている。 自宅に戻ってから、うちでも作ってTくんに食べさせてあげよう!と「ちらし寿司の素」を買って来たはいいけど、ずっとそのまんまだった。それをついに活用できたんだ。 でも、おいなりさん作りは自分の中の面倒くさがり屋が出てきて決行できず…そこで、作られたのは、ジャーン! 「おいなりちらしごはん」だ! 「おいなり」は前日に甘辛味で作ったキノコじゃが(キノコと油揚げとジャガイモの煮物)に入っていたやつ。それを市販のちらし寿司の素を混ぜただけのご飯の上にのせたんだ。包んでないけど、味はおいなりさん風。 手抜きごはん、だけど割とおいしかったから、また作るかもね。

黒オリーブのパン

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  Tくんが脂質の摂取を控える食生活を始めてから、また自分でパンを焼くようになった。といっても、前のように手ごねではなく、ホームベーカリーでだ。 ホームベーカリーは実家で大活躍のがツインバードのだったので、実績があるということでウチの子もツインバードだ。  付属のレシピの「ハード食パン」が油脂ゼロでいいと思ったんだけど、作ってみると食感が悪いとか何だとかで、Tくんに不評。 色々と試行錯誤して、今のところ一番普通の「食パン」のレシピでバターをレシピの半分に減らして作っている。最近は、それにレーズンとシナモンを入れてレーズンパンにするのがお気に入りだ。  今回、初めてレーズンではなく、黒オリーブを入れてみた。油脂はバターではなくオリーブオイルにして。 実をいうと、付属レシピには「レシピ記載以外の油脂は使わないこと」みたいなことが書いてあったから、ちょっとドキドキだった。  実験は成功!黒オリーブ入り食パンが焼き上がりました! ワインにも、朝のサラダ菜とチーズにもよく合って、とてもおいしかった。  黒オリーブ入りのパンは、アメリカにいる時によく焼いていた。堀井和子さんの『堀井和子の1つの生地で作るパン』という本に載っていたんだ。その時は丸パンに黒オリーブを入れて、手ごねで焼いていたんだけど。それがあったから、今回の食パンにつながった。  この本、アメリカにまで持って行ったお気に入りの本だったけど、この間手放した。 でも、手放しても、だいじょうぶ。ちゃんと本の内容は自分の中に取り込まれていて、今の生活に合ったパンを焼くことができた。

雪の日のクッキー

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  雪や こんこ あられや こんこ 降っては 降っては ずんずん 積もる 山も 野原も わたぼうし かぶり 枯れ木 残らず 花となる 雪が降りはじめたのを見て、ハチベエと私、「雪」の入った童謡のレコードをかけて、窓の外の雪のリズムで飛び跳ねながら歌った。雪、積もらないかな!積もるといいなあ! 今は「大雪」となると雪国じゃない地方の小学校は休校になるみたいだけど、私の時代は違ったんだ。雪が積もると、先生が「今日の授業はなし!雪で遊ぼう〜」と言って、「わーい!」と私たち。グラウンドに出て、雪だるまを作ったり、雪合戦をしたり、楽しいことばかりだった。 雪や こんこ あられや こんこ 降っても 降っても まだ 降りやまぬ 犬は よろこび 庭 かけまわり 猫は こたつで まるくなる そう。犬はよろこび、って、本当なんだ。帰ってからはハチベエとワンコを連れ出して遊んだ。ワンコ大はしゃぎ。積もった雪の中をハフハフと、なんだか泳いでいるみたい。雪だるまじゃなくて、うちのワンちゃんそっくりの雪ワンコを作ろうと、2人で無心に作り続けたこともあったっけ。 雪遊びで夢中になって、心はポカポカ。でも、体は冷え冷えだ。いつかの雪の日、家の前の田んぼをはさんで向こう側に住んでいたTちゃんと遊んだ後、Tちゃんのお母さんに淹れてもらったあったかーいお茶を思い出す。「あら?このクッキー、ずいぶん冷たいわね」とTちゃんのお母さん。カバンの中に入れていたパパの手作りクッキーは冷えきっていたんだ。冷え冷えの絞り出しクッキー。真ん中に乗せられた赤いジャムはカチコチだった。 「大雪だ、大雪だ」と、先週から言われ続けていたけど、私の住むまちでは雪は舞っても積もるようなことはなく、むしろ台風みたいな強風のほうが心配なくらいでちょっと拍子抜けだった。それがなんと今朝、急に雪が降り始め、1時間ぐらいで庭にふわり綿帽子をかぶせた。 もう雨に変わってしまったけど、今日のお茶の時間には手作りクッキーを食べようかな。

ふりかえりのモナカ

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   小さい頃はあんこって苦手だった。だから、私にとってモナカなんて、「 味があるんだか無いんだかよく分からない皮にはさまれた大量のあんこ 」というだけの食べ物で、全く興味のないお菓子というか、自らすすんで食べようというものではなかった。だがしかし!このモナカは違ったんだ。  名古屋に行った時に空港で買ってきたモナカ。ガイドブックの「実は名古屋は和菓子も美味しい」という一文にひかれ、さらに、どうして名古屋の和菓子が美味しいかって、【秀吉の茶の湯→ご執心】から来てる、みたいな文にもひかれ、そこに紹介されていたモナカを試しに買って帰ってみたら、「モナカのくせに」本当においしかったんだ。これ、お土産にあげた人たちからも口々に言われたので、美味しく感じたのは私ばかりではない。すごい、すごいぞ秀吉!名古屋の和菓子のレベルアップに貢献してたんだね!って感心した。  それで、この間、Tくんが名古屋に出張だと聞いて、真っ先に思ったのはこのモナカのことだった。でも、憶えているのは名古屋のモナカっていうことだけ。名古屋に行ったのはいつのことだったかもはっきりとは憶えていなくて、お土産のリクエストを出せないまま、Tくんは出張に行ってしまった。ここで、ふつうならあきらめてしまいそうなんだけど、ここは八兵衛のお姉ちゃん、確か名古屋で写真を撮ったはず!と写真を検索し、それが2017年のことだったことを調べ上げた。次に、2017年の手帳を出してきて、パラパラとめくった。そして見つけたんだ! 【不朽園の最中】 のシールが貼られたページを!  わーい!あった、あった!と大喜びでこの手帳のページを撮って、Tくんに送りつけた。Tくんは最初、一体何のことか分からなかったようだけど、「これを買ってこいってことね?」とお土産に買ってきてくれた。さすが、つきあいの長いTくんだ。  7年ぶりの不朽園の最中を心ゆくまで味わいながら、7年前の手帳を見返した。自分の書いた手帳ほどおもしろいものはない。あっという間に飛んでいった7年間だという気がするけれど、たしかにこの手帳に2017年を生きていた私が記録されていた。たしかに【時間】を捕まえておくのに手帳は有効だ。   ちゃんと、毎日を、彩り豊かに、生きているよ 、と、2017年の私に励まされた。

キャンプのカレー

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Tくんがカルディで買ってみたレトルトカレーと換羽の続いているJさん   今朝は久しぶりに眠い朝だった。デッキの植物に水をやらねばと外に出たら、久しぶりの朝っぽい空気!気温を確認したら24℃だった!そうか、久しぶりに熱帯夜じゃなかったんだ!それで、よく眠れたらしい。春眠ならぬ 秋眠、暁を覚えず だ。  この朝っぽい空気はキャンプの朝を思い出させた。あれは小学校3年生の夏だったと思う。家族で初めてキャンプに行ったんだ。  それまでキャンプに行ったことが無かったから、「キャンプは楽しいよ〜楽しいよ〜」と母にずっと聞かされていて、そりゃあもう楽しみにしていた。川で遊べるというから、そのためにハチベエと私、おそろいの水着を買ってもらって、キティちゃんのプール用のバッグも買ってもらって、期待マックスで当日を迎えた。  その頃は家に車が無かったのか、その初めてのキャンプは電車を乗り継いで行ったんだ。最後はバスだったんだと思うけど。その電車のどこかで事件は起こった。新品ピカピカのキティちゃんバッグが無くなったんだ。バッグの中には出番を待っていた水着も、それからその日食べるはずだったおにぎりも入っていた。どうやら、どこかで誰かに盗られたらしい。  こんな出だしだったら、ガッカリでせっかくのキャンプ企画も台無し!になっていそうなのに、初めてのキャンプは初めての連続で、「最高!」だった。国語の教科書にあった『つりばしわたれ』を思い出させる吊り橋、水着がないからTシャツのまま、冷たくてきれいな川の水に体を浮かべてみたこと、カブトムシがいそうな樹液の香りのまざった空気。ワクワク・ドキドキを感じられれば、残念な記憶も上書きされるんだ。  小さくて簡素なバンガローでの夕食はカレーだった。カレーといっても、野菜を切って炒めてとイチから作るやつじゃない。ごはんも飯ごうで炊いたりはしなかった。  カレーは缶入りの、ごはんも真空パックになっているの、それらをお湯で温めるだけだった。それなのに、キャンプのカレーって、すごくすごくおいしかったんだ。  今でも缶入りのカレーを見つけると、キャンプのことを思い出す。それにしても、あれ、どうしてレトルトカレーじゃなくて缶だったんだろう。缶はかさばって、重くて、大変な気がするけどな…やっぱり缶入りのやつの方がおいしいからかな。

み・ぞ・れ

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 「雨マークが消えてる!」iPhoneを片手にTくんが今朝ボヤいていた。もう2週間以上、ずっと雨が降っていない。雷注意報が出ても、夕立も降らない。さすがの田舎の庭も疲れ切っている。それで週刊天気予報の雨マークに期待していたのに、どうやら予報はまた変わったみたい。水が足りていない庭はキョーレツな熱い空気を通して白々と見える。  ハチベエと過ごしていた夏休み、その年も、こんな白っぽいカラカラした日が続いていたんだ。それでも小学生パワーで、外で遊んだ。毎日、毎日。家の近くには遊べるような田んぼとか神社とか無かったけど、どこかしら遊べる場所は見つけるものなんだね。庭と呼ぶには狭すぎる家の裏とか、資材が放置してある空き地やなんかも遊び場だった。  汗だくになっていたはずなんだけど、それは不思議と覚えていない。覚えているのは、そのときハマったアイスのことだ。  うっすら黄いろいアイス、かたくて冷たい大きな棒アイスだ。当時のテレビのCMの歌が耳に残っていて名前まで覚えている。♪「み・ぞ・れ」だ。  グレープフルーツ味がおいしいんだ、って、ハチベエに教えてもらったんだと思う。お隣の八百屋さんだったかなあ、ずっとまっすぐ歩いて行ったところにあるスーパーだったかなあ、いや、やっぱり八百屋さんだ。そこへ、くりかえし、くりかえし、買いに行ったんだ。  おいしいねえ、おいしいねえ!と二人とも大好きだった。つめたくて、おいしくて、あれを食べると涼しくなった。 だから、汗のことはすっかり忘れてしまっているのかもしれない。

朝ごはんには目玉焼き

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 昨年、ヤクルトさんの健康イベントに行って、料理研究家の浜内千波先生のお話を聞いた。いくつか気になる本もあって、お名前だけ知っていた先生だったけど、とっても気さくで楽しいトークに引き込まれ、たくさん笑ってあっという間の時間だったんだ。その時に教えてもらったことの1つが「タンパク質を摂りましょう」だ。 あら、ウチはちゃんと摂っているから大丈夫〜と聞いていたら、あれれ?ちょっと気をつけなくちゃ!と思い直した。 まずは1日に必要なタンパク質の量、それは体重によるんだって。「体重のキロをグラムに置き換えた量と覚えてね」と先生。つまり、体重が100キロの人は100グラム、50キロの人は50グラムが1日に必要なタンパク質の量ということだ。 ただし、このタンパク質、体が吸収できるのは1回の食事で20グラムまでなんだって。だから、1回の食事だけで補おうっていうのは、ちょっと難しい。だから、体の大きなスポーツ選手は間食を上手に使って、何回もに分けてタンパク質を摂取しているんですよ、と先生は言っていた。 うーん。うちの朝ごはん、まずいかも。タンパク質、足りていないかも! うちの朝ごはんは 前にも書いた けど、ほぼワンパターンで、タンパク質らしいタンパク質といえば紅茶に入っている牛乳、スライスチーズ、そして豆乳ヨーグルト(おお、きなこを入れているのはマルだ!)、うーこんなもんだ…やっぱり足りなそうだ。これは何とかしなければ。 …ということで、目玉焼きが時々登場するようになったんだ。  朝食がワンパターン化する前は、もっとよく作っていた目玉焼き、お野菜をサッと炒めたところに卵を割り入れて蓋をして蒸し焼きにするのがウチの定番。小さい時によく朝ごはんに作ってもらっていたのを真似して作っているんだ。 お野菜とのバランスがいいと言って、Tくんは喜んで食べてくれる。私ももちろん気に入っているけど、小さい時は目玉焼きだけで(お野菜抜きで)食べたいんだけどなあって、実はこっそり思っていたんだ。  そのチャンスの日はやって来た。「お腹すいたー」と騒ぐハチベエを余所に、私は母の『栄養と料理』の「お料理1年生」みたいなコーナーの「目玉焼き」と睨めっこ、これを作ってみることにしたんだ。そう、目玉焼きだけの目玉焼きだ。 目玉焼きに作り方なんてあるの?って思うかもしれないけど、ちゃんと書いてあった。ちゃんと...

ホットケーキは2枚重ね

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    実家に帰った。金土日の短い滞在。今回、行きが早い時間なのは良かったけど、帰りの飛行機の出発時刻も早くて、ちょっと忙しない気持ちだった。帰る日は朝から荷造り、ごはんを食べたら出発だ。ちょっと雨もパラついていたので、父が駅まで車で送ってくれた。順調に駅に着き、余裕をもって改札を通り、チェックインでもしておこうとホームでアプリをクリックした。  あれ?飛行機の時間がおかしい。15時出発になってる。え?11時じゃなかった?と混乱していたら、Tくんからもメッセージが。「昨日のチェックインメールには15時と」え??と焦る私。じゃあ、このカレンダーにある時間は何?  それは、行きの飛行機の到着時間だった。iPhoneのカレンダーに間違えて登録してしまったのだ。正しくは15時の飛行機。ああ、電車に乗る前に気づけて助かった!それで、もう一度迎えに来てもらって、またうちに帰ったんだ。  おっちょこちょいが似たわね〜と大笑い。でも、ちゃんと戻って来られたおかげで、お昼には父が焼いたホットケーキにありつけた。  ホットケーキ、母が焼くときはいつも大きなフライパンで1枚、大きいやつを焼いて、4等分するのが常だった。その方が一度に4人分焼けて、みんな一緒に焼きたてを美味しく食べられるし、合理的で賢いやり方だ。でもね、それって、ホットケーキって感じがしないなぁ…って、こっそり思ってたんだ。  ホットケーキミックスのパッケージのも、デパートのレストラン街で見るよく出来た見本のホットケーキも、きつね色した丸いやつが2枚重ねられていたからね。その上に四角いバター、そしてたっぷりかけられたシロップ。こんなホットケーキに憧れていた。  そんなある日曜日の朝、父がホットケーキを焼いてくれた。父は薄力粉とベーキングパウダーでミックス粉を作り、お砂糖と水を煮詰めてシロップを作った。かくして、お皿に盛り付けられたホットケーキは、きつね色で、丸くて、2枚重ねだった。本物の(?)ホットケーキだ!  あれからもう何十年も経っているけど、やっぱり父の作るホットケーキはいつもこんなふうに2枚重ねなんだ。

ご褒美に不二家のパフェ

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この間、Cセンパイと第3回チョコレートクラブを開催した。チョコレート好きのCセンパイとふたりで、チョコレートパフェを食べに行く!という会?だ。さて、どこへ行こうか。本当は前回と同じお店【 ファーイーストバザール 】に行きたかった。ここのチョコレートパフェはチョコレートとナッツ大好き人間には最高だった。また来ようねと言っていたのに、コロナ禍の間にお店は他のお店に変わってしまっていた。もう私たちの町からは撤退してしまったのかもしれない。 それで仕方なく他の店をとネットで探してみたんだけど、出てくるのはフルーツパフェの写真ばかりだった。フルーツパフェは色とりどりで映えるからね…「インスタ映え」が求められる今の時代、チョコレートパフェなんて地味な色合いは流行らないのね…と、もうネットで探すのは諦め、その場で探し歩くことにした。 お客の年齢層が高めのお店がいいかもよ!と思いつき、行ってみたら、あった〜!!季節限定、栗のチョコレートパフェのポスターがでかでかと貼り出されていた。 チョコレートというよりは栗好きが喜ぶに違いないというパフェだったけど、久しぶりのパフェは嬉しくて、楽しくて、美味しかった。それで、昔食べたパフェのことを思い出していたんだ。 あれは小学5年生のころだったと思う。塾の会場模試みたいなのがあって、いつもの塾ではなく、慶應義塾大学のどこかのキャンパスに行って受けるという日があった。そこへは父と電車に乗って行ったんだ。覚えているのは、アルバイトのお兄ちゃんたちが着けていた塾オリジナルのネクタイを父が笑ったこと、休憩のときに飲んだ記憶史上最高のグレープフルーツジュース、そして帰りに父と食べたパフェのことだけだ。ね、私、やっぱりハチベエのお姉ちゃんだ。 慣れない場所での長い長い試験が終わって、ぐったりしていた私を元気づけようと、父がはりきって「とっておきの所があるから!パパがごちそうしてあげるよ!」と連れて行ってくれたところは不二家のレストランだった。不二家って、ケーキのショーケースがあるお店しか知らなかったから、驚いた。席について、私がメニューを見る間も無く、父はすぐにいちごパフェを注文した。2つ。私の意見も聞かずに。 もちろんその当時からパフェはチョコレート派だったから、なんで勝手に注文しちゃうの?と思った。果物好きのハチベエなら、いちごパフェ万歳でしょうけど、...

トマトにお砂糖

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   もう1ヶ月近く前の話だ。職場でプチトマトをたくさんいただいたので、この夏全開のお日さまパワーを活かさん!と、2Fデッキで干してセミドライトマトを作った。 なんでもこのプチトマトは90歳を過ぎたおばあさまが作った物だということで、お日さまパワーのみならず元気印がピカピカだ。  セミドライトマトはトマトを半分に切って、塩をパラパラ、それを網に並べて干すだけだ。トマトはそのままでも美味しいけれど、干すと旨味が増すので、刻んで料理に使うと美味しさ倍増、使い勝手がいい。  こんなふうに、干したり、カレーに入れたりすることもあるけど、やっぱりトマトは生で切って食べるのが一番多い。何も味付けせずにそのまま食べるのも結構好きだけど、何かかけるとしたら、塩とか、マヨネーズとか、ドレッシングとか、塩味のものが私の中では普通だ。そのトマトにお砂糖をかけて食べることがあるというのを知ったのは、小学校の5年生ぐらいだったと思う。  父に買ってもらった澤地久恵さんの本、本の題名は忘れてしまったけれど、その中にトマトの話があった。子どもの頃の久恵さん、トマトが夏のおやつだったんだって。 ------トマトを丸ごと1つ。ヘタのところをくり抜いて、そこにお砂糖を埋め込んで、トマトを持って遊びに行く。外側からかじって食べ進めていくと、どんどん甘くなっていくんだけど、トマトの汁とお砂糖で手も口もベタベタになる、でもすごくそれが美味しかったって、そんな話だった。 真っ黒なオカッパ頭のやせっぽっちの少女が、かじりかけのトマトを持って、手をベタベタにして、日に焼けた顔に映える白い歯を見せてガハハと笑っている様子が今も目に浮かぶ。って、会ったこともないのにね。しかも戦時中のお話だ。でもなぜか、その久恵さんは古い友達のように、私の頭の中に住んでいるんだ。 恐るべし、小説家の力。  それにしてもトマトにお砂糖だなんて、気持ちが悪い!と思う一方で、久恵さんがすごく美味しそうにトマトを食べるものだから、同じようにトマトを食べてみたいという気持ちもうっすらとあった。それが半分実現したのは、ある夏イトコのN美ちゃんとトマトを食べたときだった。  N美ちゃんはトマトを丸ごとではなく、食べやすく一口大にカットしてガラスの器に入れた。そして慣れた様子でお砂糖をかけたんだ。「こうして食べると美味しいって、パパに教えて...

生まれて初めて作った料理

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   久しぶりに実家に帰って、両親の行きつけの居酒屋へ行った。「本日のおすすめ」でひと目見て気になったやつを父が(心を読んで!)注文してくれた。「水茄子の刺身」  水茄子っていうナスがあるんだよ、と父。ナスをアク抜きする時に水に浸すから、そう言ってるのだとばかり思っていたが、水茄子って水分が多くて皮が薄くアクの少ない高級ナスがあるらしい。 運ばれてきたお皿から、ふわっと瑞々しい茄子の香りがした。シャクシャク、あまーい! この茄子で思い出すのは、私の人生で初めての料理「茄子の塩揉み」のことだ。  通っていた幼稚園では、その年、ナスを育てていた。そして、ある日、そのナスを収穫。みんなで料理することになった。その時教えてもらったのが「茄子の塩揉み」。ナスを拍子木切りして、塩揉みし、さっと洗って、絞って、ちょっとお醤油をたらして、できあがり。簡単だ。  幼稚園生、生まれて初めて自分で作った料理の美味しさに感動した。それで、その日帰ったおばあちゃんの家で、もう一度作ったんだ。どうしても、おばあちゃんに食べさせたくて。  幼稚園からナスを持ち帰ることができたのか、おばあちゃんの家にあったナスを使ったのか、そこは全く記憶が無いんだけど、おばあちゃんに見てもらいながら、茄子の塩揉み、再現したんだ。これまた、とっても美味しくできた。この体験で、「茄子の塩揉み」が最初の料理レパートリーとなった。ハチベエにも何度も作ってあげた。  それからもう何十年も後、おばあちゃんが、ずうっと歳をとってからのこと。一緒にキッチンに立って、ナスを切っていたら、ふと、 「ねえ、あの時の茄子の美味しかったこと!あれは、ほんっとうに美味しかったねえ。」って。 うん、本当に美味しかったね。 2人で同じ記憶を重ね合えたことで、嬉しくて、嬉しくて、2人でたくさん笑った。  おばあちゃんにも、覚えてもらえてたんだ。 「茄子の塩揉み」の記憶は震えた。

おばあちゃんのコロッケ

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 A子ちゃんが送ってきてくれたり、野菜屋さんのYさんが持ってきてくれたりして、ウチにおジャガが集結してきた。それで、ポテトサラダを作ったんだ。キュウリが苦手なので、うちのポテトサラダにはキュウリが入っていない。でも何か青っぽいもの、ネギとかピーマンとかを入れている。ジャガイモ、いつもはレンジでチンしちゃうんだけど、 「鍋で茹でて粉吹きにしたジャガイモはホクホクして格別です」 って奥薗先生の本で読んで、その日はおジャガを鍋に放り込んだ。  グツグツグツ、沸騰して吹きこぼれそうになる直前、鍋の蓋を少しずらして火を弱める。この動作でいつもFおばあちゃんと作ったコロッケのことを思い出すんだ。  あの夏、いつものようにイトコの家にハチベエと一緒に遊びに行ったら、おばあちゃんしか居なかった。イトコの家でおばあちゃんと3人。おばあちゃんの独占だ!そのことだけで、ハチベエと私、ずいぶんワクワクした。  午後4時になる頃、おばあちゃんがお茶の時間にいつも見るというテレビ番組を見ながら、缶入りのクッキーと紅茶をいただいた。それで、ごはんは何がいい?という話になったんだ。  父からウワサ?を聞いていたんだったかな。それとも、自分が’得意だからおばあちゃんから提案したのかしら、いや、ハチベエと私の大好物だから私たちがリクエストしたのかもしれない。ともかく、夕食のメニューはコロッケに決まった。  イトコの家では、普段Y伯母ちゃんがごはんを作っていたから、おばあちゃんがお料理をするところを見たのは(自分の記憶では)その時が初めてだと思う。ハチベエと私、まるで、ショーを見るかのように、おばあちゃんを見ていた。  洗って、皮を剥いて、切って、…流れるように進んでいく。ジャガイモの鍋がグツグツグツ、おばあちゃんは、サッと鍋の蓋を少しずらして火を弱める。ああ、なんてかっこいいの。全ての動作に無駄がなく、美しかった。  おばあちゃんは衣をつける前に「味見する?」と小さな俵形に形作られた裸のコロッケ?を食べさせてくれた。ジャガイモのマッシュに入っているのは、これまた茹でただけのニンジンとインゲン。当時、ニンジンもインゲンもそんなに好きじゃなかったはずなのに、このままでいいから、もっと食べたい!と2人で騒いだほど美味しかった。  戦中ー戦後、今のように何でも手に入るわけじゃなかった時代に、工夫しながら5人の...

雀の食べた洗濯のり

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   ご飯は文化鍋で炊いている。1度に炊くのは2合だけだから、小さいお鍋だ。ザルにお米を入れて、デンマークだかスウェーデンだかの黒い万能かき混ぜ棒(?)でジャジャっとお米を研ぐ。ズボラ極まりないね。2合のお米を鍋に入れたら、鍋ごと電子測りにのせて、415グラムの水を入れる。しばらくおいて吸水させておけば、炊くのはスグだ。ガス台にのせて、沸騰するまでは強火、沸騰したら弱火にしてタイマー5分。タイマーが鳴ったら火を止めて、10分くらい放置して出来上がり!  この文化鍋が家に来るまでは、ずっと炊飯器で炊いていたんだ。18で大学に入って一人暮らしを始める時に買ってもらった小さな炊飯器。写真があるはずなんだけど、見つからず残念。HITACHIと書いてあって、スイッチがまん丸で、小さくてかわいいお気に入りの炊飯器だった。この子がずーっと、ごはんを炊いてくれていたんだけど、ついに電源コードの接続が不安定になって来て、危ないからサヨナラした方がいいね、ということになり、泣く泣く、それに代わる炊飯器を探した。でも、彼女(?)を上回る炊飯器に出会えなかった。時代は変わっており、小さそうに見えてもマイコン分の奥行きがしっかりあって、シンプルで小さい炊飯器は見つからなかった。  じゃあ、鍋で炊く?と言っても、それも嫌だった。その頃、家には小さいル・クルーゼ鍋があったんだけど、ル・クルーゼ鍋でご飯を炊くのはあまり好きじゃなかった。沸騰してから弱火にしても少しずつシュンシュンと吹きこぼれてくるからだ。  それで困って、色々と調べている中で、見つけたのがこの文化鍋だ。  文化鍋は吹きこぼれないように、工夫されている。鍋の縁のところが鍋蓋よりひと回り大きくなっていて、シュンシュン言う吹きこぼれを受け止めてくれるんだ。その吹きこぼれが糊のような役目をするのか、蓋と鍋はしっかり密着して、ル・クルーゼと大違いの軽い鍋なのに、とても美味しくご飯が炊き上がるんだ。すごく気に入っているから、色々な人に勧めるけど、やっぱりタイマーが無いとね、とか皆それぞれのこだわりポイントがあるので、文化鍋仲間はあまり増えていない。  その文化鍋を洗いながら、洗濯のりのことを思い出した。  『舌切り雀』という昔話。うう、恐ろしいタイトルだ。これに出てくる雀は、恐い恐いお婆さんの洗濯のりを食べたせいで、舌を切られてしまう...

レタスの食べ方

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   テレビをつけたら、和食の料理人、笠原将弘さんが出ていた。NHKのザ・ヒューマンという番組だ。笠原将弘さんと言えば、「賛否両論」というお店の、美味しそうなレシピ本をたくさん出している人、ぐらいの認識だった。久しぶりにテレビで見た笠原さんの顔つきは、10年以上前に同じくテレビで見たそれとは違って見えた。歳をとったとかそういうことではなく。  笠原さんは、奥さんを亡くしていた。3人の子どもたちはまだ小さかったという。テレビにはもう大きくなった末っ子の長男さんにお弁当を作る様子が映し出されていた。あらたまって伝えたことはないけど、感謝しかありません、と、奥でお弁当を作る父親を少し気にしながら、高校生の彼はカメラに向かって打ち明けた。  「賛否両論」は予約の取れない人気のお店だ。新作メニューの開発に取り組む姿や、お客さんに喜んでもらうことに徹して考え尽くされた料理が出される様子に目を奪われる一方で、ご両親と奥さんの遺影の前の十字架に祈る笠原さんの横顔が目に沁みた。  笠原さんは、若い料理人を育てることにも力を尽くしている。お店にも多くのスタッフがいて、笠原さんから日々学んでいるようだった。面白かったのが食材コンペ。その日のお題は「レタス」で、それぞれがアイディア溢れるレタスの料理を出していた。最後にオーナーの笠原さんが結果発表するんだけど、その前に、ちゃんとレクチャーをしてくれるんだ。  笠原さんが料理を考えるときにベースとなることの1つが「その食材の特徴を考えること、そして足りない物があれば補うこと。」なんだって。  レタスは味はほとんど無くて、ほろ苦さ少しとシャキシャキ食感。だから、これに塩分、甘味、酸味、香り、油分を足していく…と言いながら、笠原さんは千切っただけのレタスに塩や砂糖、レモン汁、ミントなど、混ぜていく。そして、最後にチーズを、和食じゃないんだけど…と言いながらおろし入れた。かくしてレタスサラダの完成。それを食べたお弟子さん、思わず「おいしい〜!」とうなっていた。  このレタスコンペで思い出したのは、Bちゃんに教わったレタス料理だ。大学生になって、一人暮らしをするようになって間もない頃のことだ。「レタスってね、私、あまり好きじゃなかったんだけど…」そう言いながらレタスをちぎるBちゃん。「こうしたら、いっぱい食べられるのよ。しかも結構おいしい。そ...

シブいお弁当

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 お野菜屋さんのYさんが、今年も蕗を持って来てくれた。近所のT美ちゃんがお裾分けしてくれたワカメと一緒に炊き合わせた。「お、蕗だね。久しぶりだね。」とTくん。そう、蕗はこの時期だけだからね。春の味だね。  蕗なんて、絶対自分では買おうとは思わなかったお野菜だ。ここに引っ越してくる前に入っていたお野菜の生産者組合さんがこの時期になると必ず持って来ていたので、料理できるようになったんだ。栄養のことや、下処理の方法、レシピが書かれたプリントと一緒に持って来てくれるので、とてもためになった。今もファイルしてあるプリントには、こう書いてある。 「ふきには食物繊維が含まれ、腸の働きを活発にして便秘の予防や解消に役立ちます。ふき特有の香りとほろ苦さは、咳を鎮め、たんをきる働きがあるそうです。」 処理方法  1洗って鍋に入る大きさに合わせて切り、塩を振って、手のひらで押しころがす(板ずり) 2 たっぷりの熱湯でゆで、冷水にとって冷まし、水の中で端から皮をむく。  この皮をむく作業が、結構好きだ。スーッとむくと、きれいなツルッとした翡翠色の肌が現れるんだ。「こんな細い棒の皮なんて、手でむけるわけ?!」と、初めてこのプリントと睨めっこしながら下処理した時は、想像もできなかったけどね。  蕗というお野菜、子どもの頃に食卓に出て来た覚えは全くないんだけど、幼稚園の時から知っている野菜の名前だ。なぜって、この歌。おべんとうの歌。 ♪これっくらいの おべんとばこに、おにぎり おにぎり ちょっとつめて、 きざーみ しょうがに、ごましお ふって、 にんじんさん、しいたけさん、ごぼうさん、 あなーのあいた れんこんさん、 すじーの とおった ふーき!  これ、幼稚園で習って、アリさんのお弁当箱バージョンやら、ゾウさんのお弁当箱バージョンやら、「これっくらい」のところで、大きさを振り付けで示しながら、よく歌っていた。それで知っていた蕗のことだけど、お弁当に入っていたことは皆無だったな。  だって、この歌のお弁当の内容、幼稚園生にしては(いや、もしかしたら大人にとってもシブ過ぎじゃないかしら。

夏の暑い日の引っ越し

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 何年か前に、エクセルで「自分年表」なるものを作ってみた。ずっと前にFacebookでそういうのを見かけて、何もFacebookに上げなくても、自分自身で作っておけばいいかもと、簡単に作成したものだ。  「和暦」「西暦」「満年齢」「できごと」「学齢」「学歴・職歴」「場所」…と列を作って入力している。それを、ふと、見返したくなった。TKちゃんに久しぶりに手紙を書いて、頭のその辺りの引き出しが開いたからかもしれない。正確には、何年来の友達なんだろう、と確認したくなったんだ。そして、あの引っ越しの日にも、思いが及んだ。そう、あれはお盆の頃だった。  その日は、ものすごく暑い日だった。うちの車にはエアコンが無く、いや、あったのかもしれないけど、壊れていたのか、ついていたのに冷えなかったのか、高速道路では危ないからと、窓も開けられず、八兵衛と私、車の中でうちわをパタパタ、「暑い〜暑いよ〜」「暑いのは皆も同じ!」と、ぎゃあぎゃあ、わあわあ。そうした中、窓の外に、どこかのビルのデジタル気温計が見えた。「見て、あれ!34℃だよ!34℃、超えてるよ!」  こんなに高い気温、見たことなかった。その後入ったレストランの窓ガラスが曇っていて、驚いた。これは冷房の効いた店内と外気との気温差のせいに違いない、と思った。  こんなに暑い日に、重い荷物を運び入れなければならなかった引越し屋さんは、どんなに大変だったことだろう。引っ越し先に着いて、大人たちの作業中、母は私にお財布を預け、自動販売機でジュースを買ってくるように言った。「何でもいいから、2人で、持てるだけ、いっぱい買ってきて。10本、いや20本かしら」  すごい。そんなにたくさん、ジュースを買ってもいいなんて!と、八兵衛と興奮した。スリムな缶、250mlしか入らないんじゃないかな、あの缶。あれしか売っていない時代だった。どれにしようかな、いつもは迷う自動販売機の前で、その日は片っ端から、次から次へとボタンを押した。ゴトン、ゴトンと、いっぱい出てきたジュースを抱えて、八兵衛と2人、新しい匂いのする家に戻ったんだ。  あの日から39年経って、私の体験した最高気温は38.9℃まで上昇した。 そうか、来年はTKちゃんと、友達40周年なんだ…

熊さんの葡萄の手

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   A子ちゃんのお母様から、今年も立派な葡萄が届いた。ニューピオーネと安芸クイーンとシャインマスカットの3種類だ。どれも、それぞれ風味が違って、甘くてジューシーでとても美味しい。こんな大粒の葡萄は、うちでは一気に皮と種を除いて器に盛って、スプーンでパクパクいただく。皮を剥いたり、種を取ったり、面倒臭そうだけれど、意外とそうでもない。  まず一粒をお気に入りのビクトリノックスのトマトナイフで半分にカット。(このトマトナイフ、軽くて、切れ味がよくて、しかも安い。オススメ!)種があったら、小さいスプーン(0.1グラムの計量スプーンがちょうどいい)でピッとくり抜き、皮側からキュッと実を押し出す。実はぴょこんと簡単に出てくれるので、気持ちがいい。シャインマスカットだけは、皮が薄いから、ちゃんとナイフを使って剥かないといけない。まあ、剥く必要がないほど薄いっていうことなんだけど、Tくんが皮がない方が好きそうなので、剥いている。  小さい頃、おやつのデラウェアを食べ終わった後、残った山盛りの葡萄の皮を握りしめて、手に葡萄の果汁を染み込ませようとしたことがある。なんでそんな汚らしい、変なことをしたかって、冬眠前の熊さんの真似だったんだ。  冬眠前の熊さんのお話を読んだのは、たしか『ひろすけ童話』だったと思う。熊さんは、冬眠前の準備で、色々たくさん食べておくんだけど、その時、大好きな葡萄があったら、手にしっかり塗りつけておくんだ。熊さんは、冬眠中にふと目が覚めることがある。そんな時、手をペロっと舐めるんだって。葡萄を塗りつけておいた手は、キャラメルみたいな、なんとも言えない味がして、それで熊さんは安心してまた眠りにつけるんだって。  熊さんの言う味を体験したくて、私、冬眠はしなかったけど、しばらくして乾いた手をペロッとした。熊さんの気持ちになれた気がした。  器の葡萄をスプーンですくって、パクパク平らげた後には、果汁が残る。Tくんはそれをグイッと飲み干す。私は、というと、手に塗りつけるのはもうやめて、文鳥のJさんにお福分けだ。Jさんは文鳥らしからず、どんなフルーツを見ても知らんぷり。だから、雛の頃使っていた給餌器「育て親」の先っちょにちょっぴり果汁を含ませて、Jさんに見せる。ちゅうちゅうちゅう、と飲んでくれるJさん。ね、葡萄、おいしいでしょう。おいしいね、おいしいね。葡萄の...

だいこんの花

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   Tくんとドライブして寄ったお店で、小さなマルシェが開かれていた。オリーブオイルのスタンドで、お店の人があんまり一生懸命説明してくれるので、ちょっと味見をしてみた。「うん、これは美味しいね。」買ったばかりのパンにオリーブペーストをのせて、お豆腐にオリーブスパイスをパラリとしたくなった。思った通り、その夜のワインにぴったりのおつまみになった。  スパイスの新鮮さが際立つこのオリーブスパイスを食べて、クレイジーソルトとの出会いを思い出したんだ。  学生時代、一人暮らしをしていたワンルームの近くに、小さなレストランができた。工事をしている段階から興味津々で、前を通るたびに眺めていたから、いい感じのお店ができて何だか嬉しかった。看板には「だいこんの花」ずいぶん素朴な名前だ。あと「ポワソニエ」とも書いてあった。第二外国語でフランス語をとっていたRちゃんに「ポワソンって魚のことよ」と教えてもらって、魚料理が得意なフランス料理のお店なのかしら、と、ぼんやりと認識した。お店がオープンすると、入り口の小さな黒板にコースメニューが出るようになった。学生にも何とか手が届く1500円からコースがあった。どうしても、どうしても行きたくて、ある日ようやく行くことができたんだ。  1500円だけど、ちゃんとコースになっていた。最初に、ゆで卵が出てきた。エッグスタンドに立てられた半熟卵だ。殻の帽子が取られた卵の頭には何かが振りかけられていた。クレイジーソルトだった。ただの半熟卵が、この不思議な調味料をかけられただけで、オードブルに変身したことに驚いた。それまで見たことも聞いたこともなかったクレイジーソルト、この後、明治屋かどこかで見つけて、興奮して2つ手に入れた。たまご大好き人間の母にも教えてあげたかったからね。  だいこんの花へは、あれから何度も行った。サークルの仲のいい友達とはもちろん、地元から友達が遊びにきた時も、八兵衛が来た時も。安いし、美味しいし、連れて行った人はみんな気に入ってくれた。でも、お店から離れたところに引越ししてから、さっぱり行かなくなってしまった。そして、講座の先輩たちと久しぶりに行ったランチが最後、いつの間にか、無くなってしまった。  だいこんの花、すごくすごく美味しかったのに、覚えているのは2つだけ。初めての半熟卵と最後のランチに食べたパスタ。そう、フレンチ...

スムージーとシェイク

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     我が家のブルーベリーで日々スムージーを作って飲んでいる。昨年飲んでいたのが美味しかったのに、どんなレシピで作っていたのか、忘れてしまった。それで、シーズン最初はあれこれ迷っていたが、最近ようやく作り方が落ち着いてきた。材料は冷凍ブルーベリー、ヨーグルト、牛乳、蜂蜜、レモン汁の5つだけ。レモン汁は無くてもいいけど、あったほうが味が締まる気がする。色止めになるかと思ったんだけど、残念ながらそれはあまり効果が感じられなかった。わざわざ丸のレモンを絞ったりはしない。イオンのグリーンアイのレモン果汁がお気に入りだ。たいていデュラレックスの大きいガラスコップで飲むので、そのコップで軽量する。ブルーベリーと牛乳、ヨーグルトの比率は1:1:1/2で、蜂蜜は大さじ2でたっぷりめ、レモンは小さじ1。全部合わせてミキサーで回すだけだ。これでコップ2杯分のスムージー。ブルーベリーが多いとドロリとしすぎて飲むというよりスプーンで食べるという感じになるので、気持ち少なめにしている。牛乳は豆乳に、蜂蜜を少なめに、っていうヘルシーレシピも試してみたけれど、色がくすむし、やっぱり美味しさには欠けちゃうので、こうなったんだ。  「スムージーって何?」と聞いてきたのは父だったと思う。たしかに「スムージー」って割と新しいカタカナ語だ。厳密な定義はきちんとありそうだけど、俗に言う「スムージー」、要は「シェイク」のことなんじゃないかな。でも、「シェイク」って聞くと、ファーストフードのそれが想起されるから、それと区別するために「スムージー」ってわざわざ言うようになったんだと思う。「スムージー」は新鮮な野菜やフルーツをベースにした健康飲料という印象。それに対して「シェイク」はその対極にあるファーストフードにある感じだもんね。  あれは中学生の夏休みだったか、いとこと遊んでいたら、Y伯母ちゃんが「新しい味のシェイクが出たよ!」とマクドナルドにシェイクを買いに連れて行ってくれた。その頃、期間限定で、ピーチだとかグレープだとか、色々なフルーツ味のシェイクが次々と出ていて、いとこ達は新しいのが発表されるたびに味をチェックしているようだった。  そういうのって、なんだか新鮮で、すごく楽しい気分になった。私も全種類飲んでみたい!って。うーん、見事にマクドナルドの術中にハマってるな。その日、ワクワクして飲んだ...

パパお気に入りの宝石箱

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 最近うちではハーゲンダッツのミックスベリー&クリームチーズが流行っている。Tくんが見つけてきた期間限定のアイスクリームだ。赤いベリー味の部分と白いクリームチーズ味の部分を練って混ぜながら食べるのが正統のようだけど、Tくんは別々に食べた方が美味しいと言っている。バランスは自分でコントロールしたいらしい。  今でこそ、いつでも食べたい時に食べているアイスクリームだが、昔はちょっぴり特別な感じのものだった。今日は特別暑いから、とか、何かのご褒美、とか、熱があって食欲がないから、とかね。だから、アイスクリームの記憶は色々残っている。こんなカップのアイスクリームを見て思い出すのは「宝石箱」だ。父のお気に入りで、八兵衛と2人で時々おつかいに行ってたんだ。  「宝石箱」はちょっと高級感のあるブラックのパッケージ、そして、アイスクリームカップは丸くなくて正方形。「箱」だからね。蓋を開けると、バニラアイス、その中にキラキラした氷の宝石が散りばめられている。フルーツ味の氷だ。グリーンの氷だったらメロン味、赤い氷だったらイチゴ味だったんじゃないかなあ。色々な色の氷が入っているレインボー味というのが、頭の中にはあるんだけど、私の想像の産物かもしれない。  このアイスのこと、この間話したら、やっぱり父も憶えていた。「あれ、美味しかったよねえ。好きだったなあ。」って。あれはどこのメーカーから出していたのかな。どうして無くなっちゃったんだろう。今から考えても、なかなか素敵なアイスだったと思うんだけどな。