み・ぞ・れ


 「雨マークが消えてる!」iPhoneを片手にTくんが今朝ボヤいていた。もう2週間以上、ずっと雨が降っていない。雷注意報が出ても、夕立も降らない。さすがの田舎の庭も疲れ切っている。それで週刊天気予報の雨マークに期待していたのに、どうやら予報はまた変わったみたい。水が足りていない庭はキョーレツな熱い空気を通して白々と見える。

 ハチベエと過ごしていた夏休み、その年も、こんな白っぽいカラカラした日が続いていたんだ。それでも小学生パワーで、外で遊んだ。毎日、毎日。家の近くには遊べるような田んぼとか神社とか無かったけど、どこかしら遊べる場所は見つけるものなんだね。庭と呼ぶには狭すぎる家の裏とか、資材が放置してある空き地やなんかも遊び場だった。

 汗だくになっていたはずなんだけど、それは不思議と覚えていない。覚えているのは、そのときハマったアイスのことだ。

 うっすら黄いろいアイス、かたくて冷たい大きな棒アイスだ。当時のテレビのCMの歌が耳に残っていて名前まで覚えている。♪「み・ぞ・れ」だ。

 グレープフルーツ味がおいしいんだ、って、ハチベエに教えてもらったんだと思う。お隣の八百屋さんだったかなあ、ずっとまっすぐ歩いて行ったところにあるスーパーだったかなあ、いや、やっぱり八百屋さんだ。そこへ、くりかえし、くりかえし、買いに行ったんだ。

 おいしいねえ、おいしいねえ!と二人とも大好きだった。つめたくて、おいしくて、あれを食べると涼しくなった。

だから、汗のことはすっかり忘れてしまっているのかもしれない。