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8月, 2022の投稿を表示しています

夏の暑い日の引っ越し

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 何年か前に、エクセルで「自分年表」なるものを作ってみた。ずっと前にFacebookでそういうのを見かけて、何もFacebookに上げなくても、自分自身で作っておけばいいかもと、簡単に作成したものだ。  「和暦」「西暦」「満年齢」「できごと」「学齢」「学歴・職歴」「場所」…と列を作って入力している。それを、ふと、見返したくなった。TKちゃんに久しぶりに手紙を書いて、頭のその辺りの引き出しが開いたからかもしれない。正確には、何年来の友達なんだろう、と確認したくなったんだ。そして、あの引っ越しの日にも、思いが及んだ。そう、あれはお盆の頃だった。  その日は、ものすごく暑い日だった。うちの車にはエアコンが無く、いや、あったのかもしれないけど、壊れていたのか、ついていたのに冷えなかったのか、高速道路では危ないからと、窓も開けられず、八兵衛と私、車の中でうちわをパタパタ、「暑い〜暑いよ〜」「暑いのは皆も同じ!」と、ぎゃあぎゃあ、わあわあ。そうした中、窓の外に、どこかのビルのデジタル気温計が見えた。「見て、あれ!34℃だよ!34℃、超えてるよ!」  こんなに高い気温、見たことなかった。その後入ったレストランの窓ガラスが曇っていて、驚いた。これは冷房の効いた店内と外気との気温差のせいに違いない、と思った。  こんなに暑い日に、重い荷物を運び入れなければならなかった引越し屋さんは、どんなに大変だったことだろう。引っ越し先に着いて、大人たちの作業中、母は私にお財布を預け、自動販売機でジュースを買ってくるように言った。「何でもいいから、2人で、持てるだけ、いっぱい買ってきて。10本、いや20本かしら」  すごい。そんなにたくさん、ジュースを買ってもいいなんて!と、八兵衛と興奮した。スリムな缶、250mlしか入らないんじゃないかな、あの缶。あれしか売っていない時代だった。どれにしようかな、いつもは迷う自動販売機の前で、その日は片っ端から、次から次へとボタンを押した。ゴトン、ゴトンと、いっぱい出てきたジュースを抱えて、八兵衛と2人、新しい匂いのする家に戻ったんだ。  あの日から39年経って、私の体験した最高気温は38.9℃まで上昇した。 そうか、来年はTKちゃんと、友達40周年なんだ…

熊さんの葡萄の手

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   A子ちゃんのお母様から、今年も立派な葡萄が届いた。ニューピオーネと安芸クイーンとシャインマスカットの3種類だ。どれも、それぞれ風味が違って、甘くてジューシーでとても美味しい。こんな大粒の葡萄は、うちでは一気に皮と種を除いて器に盛って、スプーンでパクパクいただく。皮を剥いたり、種を取ったり、面倒臭そうだけれど、意外とそうでもない。  まず一粒をお気に入りのビクトリノックスのトマトナイフで半分にカット。(このトマトナイフ、軽くて、切れ味がよくて、しかも安い。オススメ!)種があったら、小さいスプーン(0.1グラムの計量スプーンがちょうどいい)でピッとくり抜き、皮側からキュッと実を押し出す。実はぴょこんと簡単に出てくれるので、気持ちがいい。シャインマスカットだけは、皮が薄いから、ちゃんとナイフを使って剥かないといけない。まあ、剥く必要がないほど薄いっていうことなんだけど、Tくんが皮がない方が好きそうなので、剥いている。  小さい頃、おやつのデラウェアを食べ終わった後、残った山盛りの葡萄の皮を握りしめて、手に葡萄の果汁を染み込ませようとしたことがある。なんでそんな汚らしい、変なことをしたかって、冬眠前の熊さんの真似だったんだ。  冬眠前の熊さんのお話を読んだのは、たしか『ひろすけ童話』だったと思う。熊さんは、冬眠前の準備で、色々たくさん食べておくんだけど、その時、大好きな葡萄があったら、手にしっかり塗りつけておくんだ。熊さんは、冬眠中にふと目が覚めることがある。そんな時、手をペロっと舐めるんだって。葡萄を塗りつけておいた手は、キャラメルみたいな、なんとも言えない味がして、それで熊さんは安心してまた眠りにつけるんだって。  熊さんの言う味を体験したくて、私、冬眠はしなかったけど、しばらくして乾いた手をペロッとした。熊さんの気持ちになれた気がした。  器の葡萄をスプーンですくって、パクパク平らげた後には、果汁が残る。Tくんはそれをグイッと飲み干す。私は、というと、手に塗りつけるのはもうやめて、文鳥のJさんにお福分けだ。Jさんは文鳥らしからず、どんなフルーツを見ても知らんぷり。だから、雛の頃使っていた給餌器「育て親」の先っちょにちょっぴり果汁を含ませて、Jさんに見せる。ちゅうちゅうちゅう、と飲んでくれるJさん。ね、葡萄、おいしいでしょう。おいしいね、おいしいね。葡萄の幸せがひ

だいこんの花

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   Tくんとドライブして寄ったお店で、小さなマルシェが開かれていた。オリーブオイルのスタンドで、お店の人があんまり一生懸命説明してくれるので、ちょっと味見をしてみた。「うん、これは美味しいね。」買ったばかりのパンにオリーブペーストをのせて、お豆腐にオリーブスパイスをパラリとしたくなった。思った通り、その夜のワインにぴったりのおつまみになった。  スパイスの新鮮さが際立つこのオリーブスパイスを食べて、クレイジーソルトとの出会いを思い出したんだ。  学生時代、一人暮らしをしていたワンルームの近くに、小さなレストランができた。工事をしている段階から興味津々で、前を通るたびに眺めていたから、いい感じのお店ができて何だか嬉しかった。看板には「だいこんの花」ずいぶん素朴な名前だ。あと「ポワソニエ」とも書いてあった。第二外国語でフランス語をとっていたRちゃんに「ポワソンって魚のことよ」と教えてもらって、魚料理が得意なフランス料理のお店なのかしら、と、ぼんやりと認識した。お店がオープンすると、入り口の小さな黒板にコースメニューが出るようになった。学生にも何とか手が届く1500円からコースがあった。どうしても、どうしても行きたくて、ある日ようやく行くことができたんだ。  1500円だけど、ちゃんとコースになっていた。最初に、ゆで卵が出てきた。エッグスタンドに立てられた半熟卵だ。殻の帽子が取られた卵の頭には何かが振りかけられていた。クレイジーソルトだった。ただの半熟卵が、この不思議な調味料をかけられただけで、オードブルに変身したことに驚いた。それまで見たことも聞いたこともなかったクレイジーソルト、この後、明治屋かどこかで見つけて、興奮して2つ手に入れた。たまご大好き人間の母にも教えてあげたかったからね。  だいこんの花へは、あれから何度も行った。サークルの仲のいい友達とはもちろん、地元から友達が遊びにきた時も、八兵衛が来た時も。安いし、美味しいし、連れて行った人はみんな気に入ってくれた。でも、お店から離れたところに引越ししてから、さっぱり行かなくなってしまった。そして、講座の先輩たちと久しぶりに行ったランチが最後、いつの間にか、無くなってしまった。  だいこんの花、すごくすごく美味しかったのに、覚えているのは2つだけ。初めての半熟卵と最後のランチに食べたパスタ。そう、フレンチの店が気

スムージーとシェイク

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     我が家のブルーベリーで日々スムージーを作って飲んでいる。昨年飲んでいたのが美味しかったのに、どんなレシピで作っていたのか、忘れてしまった。それで、シーズン最初はあれこれ迷っていたが、最近ようやく作り方が落ち着いてきた。材料は冷凍ブルーベリー、ヨーグルト、牛乳、蜂蜜、レモン汁の5つだけ。レモン汁は無くてもいいけど、あったほうが味が締まる気がする。色止めになるかと思ったんだけど、残念ながらそれはあまり効果が感じられなかった。わざわざ丸のレモンを絞ったりはしない。イオンのグリーンアイのレモン果汁がお気に入りだ。たいていデュラレックスの大きいガラスコップで飲むので、そのコップで軽量する。ブルーベリーと牛乳、ヨーグルトの比率は1:1:1/2で、蜂蜜は大さじ2でたっぷりめ、レモンは小さじ1。全部合わせてミキサーで回すだけだ。これでコップ2杯分のスムージー。ブルーベリーが多いとドロリとしすぎて飲むというよりスプーンで食べるという感じになるので、気持ち少なめにしている。牛乳は豆乳に、蜂蜜を少なめに、っていうヘルシーレシピも試してみたけれど、色がくすむし、やっぱり美味しさには欠けちゃうので、こうなったんだ。  「スムージーって何?」と聞いてきたのは父だったと思う。たしかに「スムージー」って割と新しいカタカナ語だ。厳密な定義はきちんとありそうだけど、俗に言う「スムージー」、要は「シェイク」のことなんじゃないかな。でも、「シェイク」って聞くと、ファーストフードのそれが想起されるから、それと区別するために「スムージー」ってわざわざ言うようになったんだと思う。「スムージー」は新鮮な野菜やフルーツをベースにした健康飲料という印象。それに対して「シェイク」はその対極にあるファーストフードにある感じだもんね。  あれは中学生の夏休みだったか、いとこと遊んでいたら、Y伯母ちゃんが「新しい味のシェイクが出たよ!」とマクドナルドにシェイクを買いに連れて行ってくれた。その頃、期間限定で、ピーチだとかグレープだとか、色々なフルーツ味のシェイクが次々と出ていて、いとこ達は新しいのが発表されるたびに味をチェックしているようだった。  そういうのって、なんだか新鮮で、すごく楽しい気分になった。私も全種類飲んでみたい!って。うーん、見事にマクドナルドの術中にハマってるな。その日、ワクワクして飲んだシェイク

パパお気に入りの宝石箱

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 最近うちではハーゲンダッツのミックスベリー&クリームチーズが流行っている。Tくんが見つけてきた期間限定のアイスクリームだ。赤いベリー味の部分と白いクリームチーズ味の部分を練って混ぜながら食べるのが正統のようだけど、Tくんは別々に食べた方が美味しいと言っている。バランスは自分でコントロールしたいらしい。  今でこそ、いつでも食べたい時に食べているアイスクリームだが、昔はちょっぴり特別な感じのものだった。今日は特別暑いから、とか、何かのご褒美、とか、熱があって食欲がないから、とかね。だから、アイスクリームの記憶は色々残っている。こんなカップのアイスクリームを見て思い出すのは「宝石箱」だ。父のお気に入りで、八兵衛と2人で時々おつかいに行ってたんだ。  「宝石箱」はちょっと高級感のあるブラックのパッケージ、そして、アイスクリームカップは丸くなくて正方形。「箱」だからね。蓋を開けると、バニラアイス、その中にキラキラした氷の宝石が散りばめられている。フルーツ味の氷だ。グリーンの氷だったらメロン味、赤い氷だったらイチゴ味だったんじゃないかなあ。色々な色の氷が入っているレインボー味というのが、頭の中にはあるんだけど、私の想像の産物かもしれない。  このアイスのこと、この間話したら、やっぱり父も憶えていた。「あれ、美味しかったよねえ。好きだったなあ。」って。あれはどこのメーカーから出していたのかな。どうして無くなっちゃったんだろう。今から考えても、なかなか素敵なアイスだったと思うんだけどな。