夏の暑い日の引っ越し


 何年か前に、エクセルで「自分年表」なるものを作ってみた。ずっと前にFacebookでそういうのを見かけて、何もFacebookに上げなくても、自分自身で作っておけばいいかもと、簡単に作成したものだ。
 「和暦」「西暦」「満年齢」「できごと」「学齢」「学歴・職歴」「場所」…と列を作って入力している。それを、ふと、見返したくなった。TKちゃんに久しぶりに手紙を書いて、頭のその辺りの引き出しが開いたからかもしれない。正確には、何年来の友達なんだろう、と確認したくなったんだ。そして、あの引っ越しの日にも、思いが及んだ。そう、あれはお盆の頃だった。

 その日は、ものすごく暑い日だった。うちの車にはエアコンが無く、いや、あったのかもしれないけど、壊れていたのか、ついていたのに冷えなかったのか、高速道路では危ないからと、窓も開けられず、八兵衛と私、車の中でうちわをパタパタ、「暑い〜暑いよ〜」「暑いのは皆も同じ!」と、ぎゃあぎゃあ、わあわあ。そうした中、窓の外に、どこかのビルのデジタル気温計が見えた。「見て、あれ!34℃だよ!34℃、超えてるよ!」
 こんなに高い気温、見たことなかった。その後入ったレストランの窓ガラスが曇っていて、驚いた。これは冷房の効いた店内と外気との気温差のせいに違いない、と思った。

 こんなに暑い日に、重い荷物を運び入れなければならなかった引越し屋さんは、どんなに大変だったことだろう。引っ越し先に着いて、大人たちの作業中、母は私にお財布を預け、自動販売機でジュースを買ってくるように言った。「何でもいいから、2人で、持てるだけ、いっぱい買ってきて。10本、いや20本かしら」
 すごい。そんなにたくさん、ジュースを買ってもいいなんて!と、八兵衛と興奮した。スリムな缶、250mlしか入らないんじゃないかな、あの缶。あれしか売っていない時代だった。どれにしようかな、いつもは迷う自動販売機の前で、その日は片っ端から、次から次へとボタンを押した。ゴトン、ゴトンと、いっぱい出てきたジュースを抱えて、八兵衛と2人、新しい匂いのする家に戻ったんだ。

 あの日から39年経って、私の体験した最高気温は38.9℃まで上昇した。
そうか、来年はTKちゃんと、友達40周年なんだ…