シブいお弁当


 お野菜屋さんのYさんが、今年も蕗を持って来てくれた。近所のT美ちゃんがお裾分けしてくれたワカメと一緒に炊き合わせた。「お、蕗だね。久しぶりだね。」とTくん。そう、蕗はこの時期だけだからね。春の味だね。

 蕗なんて、絶対自分では買おうとは思わなかったお野菜だ。ここに引っ越してくる前に入っていたお野菜の生産者組合さんがこの時期になると必ず持って来ていたので、料理できるようになったんだ。栄養のことや、下処理の方法、レシピが書かれたプリントと一緒に持って来てくれるので、とてもためになった。今もファイルしてあるプリントには、こう書いてある。

「ふきには食物繊維が含まれ、腸の働きを活発にして便秘の予防や解消に役立ちます。ふき特有の香りとほろ苦さは、咳を鎮め、たんをきる働きがあるそうです。」

処理方法 

1洗って鍋に入る大きさに合わせて切り、塩を振って、手のひらで押しころがす(板ずり)

2 たっぷりの熱湯でゆで、冷水にとって冷まし、水の中で端から皮をむく。

 この皮をむく作業が、結構好きだ。スーッとむくと、きれいなツルッとした翡翠色の肌が現れるんだ。「こんな細い棒の皮なんて、手でむけるわけ?!」と、初めてこのプリントと睨めっこしながら下処理した時は、想像もできなかったけどね。

 蕗というお野菜、子どもの頃に食卓に出て来た覚えは全くないんだけど、幼稚園の時から知っている野菜の名前だ。なぜって、この歌。おべんとうの歌。

♪これっくらいの おべんとばこに、おにぎり おにぎり ちょっとつめて、

きざーみ しょうがに、ごましお ふって、

にんじんさん、しいたけさん、ごぼうさん、

あなーのあいた れんこんさん、

すじーの とおった ふーき!

 これ、幼稚園で習って、アリさんのお弁当箱バージョンやら、ゾウさんのお弁当箱バージョンやら、「これっくらい」のところで、大きさを振り付けで示しながら、よく歌っていた。それで知っていた蕗のことだけど、お弁当に入っていたことは皆無だったな。

 だって、この歌のお弁当の内容、幼稚園生にしては(いや、もしかしたら大人にとってもシブ過ぎじゃないかしら。