濡れ鼠でも晴れやか

 

 今日は、「カラッと」とはいかないけど、梅雨の晴れ間。青空が嬉しい。

 昨日はというと、朝から(いや前の晩から)ざあざあ降りだった。ズボンの裾を何回か折り曲げて、短い長靴を履いて、バス停まで歩いて10分強。そんなに風が強かったわけじゃないのに、ズボンの前側はぐっしょり、シャツのおなかもびっしょり。あーあ。もう!レインコートが必要だね!とゲンナリしているうちにキュッとバスがやって来た。小さな小さなコミュニティバスだ。

 あーあ。もう!チャチャっと乗り込んで近くの椅子にドンと腰掛けて、濡れた服やらリュックやらを何とかしようとゴソゴソしていると、次の次の停留所ぐらいだっただろうか、バスは止まった。

 けど、バスは一向に動き出さない。あれ?おかしいぞ?と乗車口の方を見ると、そこだけ情景はスローモーション。小さな小さなおばあちゃんが、懸命に、小さな手を伸ばして手すりを握ったところだった。あっ!と、気がつくより早く、奥に座っていた若い女性が駆け寄り、おばあちゃんに手を貸した。そして、遅れて立ち上がった私。ふたりでおばあちゃんを両側から見守り、いや運転手さんも、背中で見守り、気をつけて、ゆっくり、ゆっくりね。おばあちゃんが無事に椅子に座るのを見届けた。やっと椅子に到達できたおばあちゃんは、じっとじっと見つめて「ありがとう」を伝えてくれた。言葉もむずかしいようだったから。

 奥からサッと駆け寄り、手を差し伸べたその人は20代ぐらいのラテン系の女性だった。大学の方を回ってくるバスだから留学生だろう。

 おばあちゃんと留学生のおかげで、私、濡れ鼠だったことはすっかり忘れて、バスを降りてからもまだ雨はざあざあ降っていたけれど、不思議だね。晴れやかな気持ちで学校に行ったんだ。