みんなで学んだ人権

 

 市の人権委員のための研修会に参加した。昨年度から委員になっているので、研修会は今回で2回目だ。市の係の人に人権教育啓発についての基本方針だとか、委員の役割だとか、スライドを見ながら説明してもらうのだけれど、一番の山場(?)はDVDだ。研修用に作られたであろうドラマをみんなで見るのだ。昨年度はヤングケアラーを題材にしたドラマを見た。新聞とかテレビとかで一応知っていた「ヤングケアラー」ではあったけれど、やっぱりドラマで見ると違った。ストーリーに引き込まれ、ドラマの人たちに感情移入して見ていくうちに、「ヤングケアラー」という言葉がぐっと自分に入ってきた。そんな研修用のドラマを今年も見たんだ。

 今年のドラマのテーマはLGBTQだった。6月がプライド月間だからかもしれない。性の多様性を表すシンボルが虹だっていうことは知っていたから、レインボー月間って誤解していたけど、ちゃんと調べてみたらプライド月間ということがわかった。研修室に通されて、配布された資料の中に「多様な性を認め合える社会へ」と書いてあるパンフレットが入っていた。

 小さなまちのコミュニティーセンターで、こんなテーマのドラマ、大丈夫かしら?!と心配になった。周りを見回したら、頭の固そうな昭和生まれ間違いなしのオジサンばっかりだったから。

 私の心配をよそに、そのドラマは上映された。心は男性なのに体は女性で、ずっと女の子としての人生を歩まされてきたことに、ずっと苦しんできた子が主人公だ。その子が二十歳を迎えるにあたってのストーリー『バースデイ』。

 37分間、昨年と同じように、すっかり引き込まれて見入っていた。ラストシーンでは、ジンとした。いや、自分がジンとするより先に、誰かが鼻をすするのが聞こえてきたんだ。それに、左前のオジサンがメガネを外しているのが見えた。目頭をおさえているみたい。どう見ても昭和のオジサンだ。

 最近は家でばかり見ていて、こうやって映画館のように見知らぬ人と同じものを見るという体験に乏しかったから、「みんなで共有する心の動き」の中に久しぶりに入って、そのことに感動してしまった。市の主催する研修会なんて、委員になる前は気にも留めていなかったんだけどね。今回も参加してよかった。

 ところで、冒頭の写真はAmazonプライムで少し前に見たイギリスBBCのドラマ『ライフ 私たちの生きる道』だ。これには衝撃を受けた。登場人物が性的マイノリティーだったり、障がい者だったりするんだけど、それらのことはドラマのテーマ自体には全然入っていない。登場人物の多様性はそのままに、殊更に言及されることもなく受け入れられ、彼らはありのままに生きていて、ドラマのストーリーは全く別のことに焦点がある。

 人権を尊重する社会が成熟してくると、作られるドラマも変わってくるんだ。