卵パワーでがんばれ

 


 最近、母が英会話の教室へ通い始めた。楽しそうで、とても嬉しい。

 英会話教室へは会社員時代に通ったことがある。20代の頃だ。同じ会社の違う部署の人に、体験レッスンに誘われて行ったのがきっかけだった。高校生の頃に3週間のホームステイをしたことがあり、大学1年の時には英会話のクラスをとっていたというのに、初めてのレッスンでは驚くほど言葉が出てこなくて、ショックだった。それでも、とても楽しかったんだ。7つに分けられたレベルのうち、最初は下から2番目ぐらいだった気がする。

 レッスンは毎月決まったポイントを買って、レッスンごとにポイントを消化していくというもの。好きな先生の時間をポイントがある限り予約できる。忙しくてあまりレッスンに行けなかった時など余ったポイントは翌月に繰り越せるのが便利だった。ポイントが余りがちになってきたら、土曜日に3クラスとか入れて「集中英会話デーだ!」なんてしたりしてね。

 “What’s new?”(なにか新しいことあった?)とか ”How was your weekend?” (週末はどうだった?)とかの毎回のレッスン開始時のお決まり質問に ”Nothing special.”(特に何も。)とどうしても答えたくなくて、ここには力を入れていた。ある時、休みに天気が良かったから干し椎茸を干した話をして「どうして?!」と笑われ、陽に当てることでビタミンDが増えるんだって、どうにかこうにか説明したこともいい思い出だ。

 英会話レッスンで学べることって、語彙だの表現だのの英語そのものではなくて、こういう時に英語母語話者はこういう風に言うんだ!みたいなことを少しずつ知っていくことのように思う。
 前に私の英会話の先生が「日本では何でも”がんばってね”だね」と言ってたのは、この逆パターンだ。
 日本語では「がんばってね」に色々な意味が含まれていて、言われた側も「ああ、励ましてもらった、気にかけてもらった」とざっくり理解する。でも英語では、励ましたい対象の人の状況に合わせて「がんばって」の強度や色合いは様々だ。”Take care!”(気をつけて)”Have fun!”(楽しんで)とか”Hang in there!”(くじけないで、ねばるんだ!)とか…(ああ、そう言えば「日本語のがんばっては、Do your best!を意味している。」とどこかで読んだことがあったっけ。)

 母はかの英会話の先生に、

”Smile, be happy and eat eggs!” 

と手書きでメッセージをもらったらしい。
わたし、思わずにっこり。ああ、いい先生みたい。良かった!

 卵が大好物の母にぴったりの「がんばってね」だ。前のレッスンで卵が好きだと言ったことを、ちゃんと覚えててくれたんだな。そして、ちゃんと復習してね、とか今日の新しいことば、忘れないでねとかじゃなくて、「笑顔でハッピーにね!」と表現する「がんばってね」。英語では「がんばって」をこうやって表現することもあるんだね。
 うん、英会話、こういうことを感じていくのが、本当に楽しいんだよね。